5月28日開催された「令和元年、ボクらのニッポンどうするの!?」のレポートコンテンツがリリースされました。

弊社ではイベントの企画、制作、そして、レポート記事の制作、映像制作を担当させていただきました。

「FQ」(フューチャー・クエスチョンズ)は、ヤフー・ジャパンのイベント連動型のマンスリーWEBマガジン。第1回目の「食」をテーマにした特集に続き、弊社では「政治」を今回は担当させていただきました。

記事および映像:https://fq.yahoo.co.jp/politics2019/6.html

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弊社では、大手クライアント様を中心に、イベント制作、コンテンツ制作(記事、映像、WEBページ)、ネイティブによる多言語コンテンツ制作の領域を強化しております。

お問い合わせ:info@liberta-inc.com 03-6265-3294

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イベントの詳細はこちら(Pass Marketより):https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/0118hg109xrv5.html

イベント概要

未来を発明する人をエンパワメントするYahoo! JAPANの新連載「Future Questions」。連動イベント第3弾は、7月に参院選を控え「政治」がテーマです。

2050年、有権者の2分の1が60歳以上になると言われています。加えて、若年層の投票率も低い現状。そんな中で、若い人向けの政策は実現されるのでしょうか?

今回は、未来の政治の担い手になる10代後半-20代前半の若者と一緒に「未来の政治」を徹底的に語り合います。この機会に、政治の「他人ごと」感を取り払いませんか。

タイムテーブル

18:00 開場

18:30 冒頭挨拶/登壇者のご紹介(20分)

18:50 会場参加型トークセッション(80分)

登壇者のみなさんと会場とを行き来しながら、下記のようなテーマに沿って約30の問い(予定)を徹底Q&A。

1:若年層の投票率とシルバーデモクラシー

2:世界の若者との政治参加の比較

3:なぜジブンごとにできない?

4:政治がタブー視される理由

5:政治×テクノロジー

6:夏の選挙に100倍行きたくなるために

20:10 まとめ (10分)

20:30 終了

登壇者プロフィール

津田大介氏

ジャーナリスト/メディア・アクティビスト。ポリタス編集長。1973年生まれ。東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。早稲田大学文学学術院教授。テレ朝チャンネル2「津田大介 日本にプラス+」キャスター。J-WAVE「JAM THE WORLD」ニュース・スーパーバイザー。一般社団法人インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2013」選出。

メディアとジャーナリズム、著作権、コンテンツビジネス、表現の自由などを専門分野として執筆活動を行う。近年は地域課題の解決や社会起業、テクノロジーが社会をどのように変えるかをテーマに取材を続ける。

主な著書に『情報戦争を生き抜く』(朝日新書)、『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)、『動員の革命』(中公新書ラクレ)、『情報の呼吸法』(朝日出版社)、『Twitter社会論』(洋泉社新書)ほか。2011年9月より週刊有料メールマガジン「メディアの現場」を配信中。

≫公式サイト:http://tsuda.ru/

伊藤和真氏

元九州大学非常勤講師。慶應義塾大学在学中。

F Venturesにてベンチャー投資に参画。自身で作成したアプリ事業を毎日新聞社に売却後、PoliPoliを創業。テクノロジーで国家システムを再構築することを目指す。

≫PoliPoli:https://www.polipoli.work/

宮川典子氏

衆院議員(自民党)。

≫公式サイト:http://miyagawanoriko.com/

木村亮太氏

枚方市議会議員(無所属)。

未来に責任を持った政治を掲げ、行財政改革、人事給与制度改革、教育子育ての充実、持続可能な社会保障制度の構築のために予防医療・介護予防、また、ICTを活用したまちづくりを提言している。

1984年大阪府枚方市生まれ、大阪大学経済学部を卒業し、ベンチャー企業に入社し、その後2011年枚方市議会議員選挙に立候補しトップ当選。現在に至る。

2015年グロービス経営大学院 修了(経営学修士:MBA)。2018年京都大学大学院 公共政策教育部 公共政策専攻 修了(公共政策修士)。

≫公式サイト:https://kimura-ryota.net/

≫Twitter:https://twitter.com/kimura_ryota

≫Facebook:https://www.facebook.com/Kimura.Ryota/

橋本ゆき氏

渋谷区議会議員(あたらしい党所属)。

1992年12月12日生まれ、三重県津市出身。

NHK東京児童合唱団ユースシンガース卒団、東京学芸大学附属高等学校卒業、東京大学文学部行動文化学科心理学専修課程卒業、アイドルグループ「仮面女子」卒業。

著書に『地下アイドルが1年で東大生になれた!合格する技術』(辰巳出版)、『ニッポン幸福戦略』(光文社)がある。

報道番組、選挙特番などでコメンテーターを務めるほか、福井県鯖江市、千葉県いすみ市、東京秋葉原の観光大使を務める。

【モデレーター】

川尻岳宏氏

NPO法人ドットジェイピー学生代表。

1998年長野県佐久市生まれ岐阜県高山市育ち。地元の高校を卒業後、2016年千葉大学法政経学部に入学。現在4年。大学では政治学・公共哲学を専攻し、「政治とメディア」をテーマに卒業論文を執筆中。

大学1年時に「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに掲げる、NPO法人ドットジェイピーによる議員インターンシップに参加。千葉市議の下で2カ月間インターン活動をしたのち、同法人千葉支部にてスタッフ活動を始める。千葉支部代表や同法人主催の国家デザインコンテスト「未来国会2018」代表などを務めたのち、2019年4月より同法人の学生代表に就任。

趣味はサッカー観戦、ミニシアター巡り、新聞読み比べ。

宮井渓氏

NPO法人ドットジェイピースタッフ。

1997年4月16日山口県岩国市出身。3姉妹の末っ子。熊本県立大学総合管理学部4年。総合管理学部とは、社会学、行政学、社会福祉学、経営学、情報学などを統合・体系化した総合管理(アドミニストレーション)学を専門的に学習する学部で日本に1つしかない。ゼミでは社会統計学を専攻している。大学では男子バレー部のマネージャーと生花サークルに所属。大学1年の夏に同法人による議員インターンシップに参加したのち、同団体の熊本支部代表を務めて、現在は広報の全国代表を務めている。

趣味はピアノ演奏、音楽鑑賞、カラオケ、ビリヤード、漫画・アニメ鑑賞、温泉巡り。座右の銘は「死ぬこと以外かすり傷」。

主催

ヤフー株式会社/NPO法人ドットジェイピー

地域発の情報発信のあるべき姿とは?

9月20日にリベルタ主催で行われた地域からの情報発信のあり方を探るトークセッションイベント「今、地域に求められる情報発信力とは?」。

東京一極集中や人口減少社会の中、日本中で「地域活性化」「地方創生」という言葉をよく聞くようになり、もうどのくらい経っただろうか。地方食材のブランド化、国内外を意識した観光地化…そう、様々な施策がそこかしこに溢れている。

そのすべてが功を奏していれば問題はないのであるが、そうはいかず、はっきり言って多くの地域が課題にまみれ、どうしようもできない現状にアップアップしている。

「観光地化に力を入れたはいいが、思うように集客できない」「6次化プランナーにお願いして素晴らしい商品を作ったのに販路がみつからない」「誰にどう宣伝すれば良いかわからないけど、ご当地キャラクターを作った」「とりあえず英語のパンフレットを作ってみた」そんな話がよく聞こえてくる。

けれども実はこれら全て、「情報の発信力」があれば解決できることなのだ。

そう、今足りないのは「発信すること」。それも、的確な人に、的確な方法で、適度な量を。

今回は、それぞれ第一線で活躍する、4名の情報発信のプロが顔を揃えた。

 

約70名もの参加者。非常に熱心に登壇者の発言に聞き入った

 

ネイティブの倉重氏は富士総合研究所(現みずほ情報総研)を経て2000年よりネットイヤーグループに創業期から参画し、大手企業のマーケティングやブランディング戦略の立案などに数多く携わる。2012年より新規事業として地域振興を目的としたデジタルメディア「北海道Likers」の立ち上げを皮切りに、「沖縄CLIP」、「瀬戸内Finder」を手掛ける。2016年にネイティブを起業し地域事業創出に従事している。

 

ネイティブの倉重氏

 

Huuuuの徳谷氏は、2011年に株式会社バーグハンバーグバーグへWEBディレクターとして入社する。「分かりすぎて困る!頭の悪い人向けの保険入門」「au × デアゴスティーニ『週刊スマホを作る』創刊!」などのサイト制作を担当。現在はHuuuuを起業し、代表、どこでも地元メディア「ジモコロ」の編集長そして「BAMP」編集長として活躍している。

 

Huuuuの徳谷氏

 

morondoの原田氏は、学生時代より株式投資をはじめ起業するまで個人投資家として過ごす。2008年に起業し、10年より「枚方つーしん」を本田一馬(共同経営者)と運営。

2015年枚方市総合計画審議会委員。

「枚方つーしん」(通称ひらつー)は大阪府枚方市に特化したローカルメディアとして月間約240万PVを突破。近年はリアルでのコワーキングスペースの運営やマルシェの開催なども手がける。

 

morondoの原田氏

 

ヤフーの西田氏は、2004年ヤフー入社。2006年から約7年間、「Yahoo! JAPAN」トップページの責任者を勤め、2008年にはヤフー初となるトップページ全面リニューアルを指揮。2013年から検索部門へ異動し、東日本大震災の復興支援と検索を掛け合わせたキャンペーン「3.11 検索は応援になる」や検索で一年を振り返るイベント「検索大賞」を立ち上げた。2017年から執行役員コーポレートグループSR推進統括本部長に就任、地域貢献活動に従事している。

 

ヤフーの西田氏

 

このメンバーが語る地方創生ビジネス成功のカギ、そして課題を抱える70名の熱き参加者との熱いディスカッション。非常に濃密な2時間半となった。

 

 “地域活性化、主役はあくまで「地元民」”

地方創生とは、いかに地域にお金をおとし、活性化し、潤っていくかに尽きる。登壇の最初を飾ったネイティブの倉重氏はいう。

ところが現状は、活性化を目指し、補助金や国の予算を使って様々な施策を打ち出すもののそのほとんどが成功には程遠い状況にあるのだ。

その一つの理由として肝心の地元民が「置いてきぼり」をくらっているという問題がある。田舎の素朴な人々は地方創生施策である「インバウンド対応」「地域ブランド化」「SNSの運用」といったカタカナ語につい難しさを感じ、都会のコンサル会社等の「プロ」に全てを任せてしまう。

その「プロ」が指示するまま多言語化された地域メディアを作成し、「プロ」が選んだ産品を新たにブランディングし、コストをかけたこだわりの新パッケージで販売する。

その結果一時的に観光客が増え、売上も上がるかもしれないが、あくまでよそ者が作ったきっかけでしかなく、地域全体に浸透した仕組みではない為、これを継続させることは難しいのだ。

「プロ」というよそ者によって作られたブーム商品よりも地元民が本当に勧めている商品の方を求めるし、何度来ても楽しめそうな歓迎ムードがない街には戻ってこない、それが観光客だ。

かといって、地域の人々が全て「プロ」任せといえばそうではない。

地域活性をビジネスとして非常に高い志をもって取り組んでいる地域もたくさんあるのである。そういった取り組みや人を可視化し、しっかりと持続性のある業界化を目指して運営している地域メディアが、ネイティブの「沖縄CLIP」と「瀬戸内Finder」なのだ。メディア内で地域外に向け紹介している観光スポット、お勧め飲食店、お勧め産品。これらの取材から撮影、記事執筆を全てその地域の人間が行っている。

地元民が勧めている情報は、この地域を知らない読み手が求めているまさに「本物」の情報。実際にこのサイト情報を元に地域に訪れる観光客は多く、またその後の再訪率も高いという。

 

「沖縄CLIP」「瀬戸内Finder」を運営するネイティブの倉重氏

 

また、ついに7月に260万PVを超えた、地元向け地域メディア「枚方つーしん」の運営会社morond代表の原田氏は、「枚方つーしん」に読者がこれだけついたのは、枚方市民が日常生活でそのまま人に伝えたくなるような使える情報を扱っていることが最大の理由ではないかと語る。

近所の新店情報や、飲食店、物件の取材。地元民が「気になっていた」「知りたかった」情報を「枚方つーしん」が教えてくれる。まさに地元民の為の地元民による地域メディアだ。枚方市民の7割以上が読者だというのだから、通学途中や夕刻の家族団らん時にシェアされる話題のソースはほとんどが「枚方つーしん」といっても決して過言ではないだろう。

 

「枚方つーしん」について語る原田氏

“ターゲットとテーマの確立”

地元民を主役にしたらあとはターゲットとテーマの確立である。

いくら良い内容のコンテンツを揃えても、次にそれを正しい読み手に伝えられなければ全く良い結果は伴わないのだ。

よく聞く失敗例は、あらゆる情報をなんでもかんでも詰め込んだ、読み手のニーズを無視した独りよがりの情報サイトだ。

いくらこだわりのワインを勧めても、日本酒好きの人は振り向いてはくれない。まず発信側が提供したい情報と読み手のニーズが合っていなければ地域活性化の成功は程遠い。

原田氏の「枚方つーしん」は言うまでもなくターゲットもテーマもずばり「枚方」。

地元民の為の地元民による地元情報発信サイトであるし、Huuuuの徳谷氏自身が編集長を務める地域メディア、「ジモコロ」では「仕事」と「地元」をテーマに一風変わった面白い人を取り上げ、ディープでキャッチ―な切り口を持ち味に、ターゲットである地元民の読者の心をつかんでいる。

「人って、今まで見たことも聞いたこともない話を聞きたがりますからね」と徳谷氏。もちろん地域の歴史や文化等社会派コンテンツも取り上げるが、やはり面白おかしく伝えることで通常むずかしいと言われる若年層のファンの獲得に成功している。

キャッチーだったり突飛だったり、オリジナル性を高めたテーマとそれを伝える先のターゲットさえ確立できれば、成功はもうすぐそこなのだ。

 

参加者の真剣なまなざし


 

参加者が成功にさらに近づけるよう、今回は実際に登壇者4人が、地域メディアにおけるテーマの確立方法から、読者や観光客の心を鷲掴みにする仕掛けの作り方など、参加者の目と耳をくぎ付けにする成功の秘訣を披露した。一問一答形式で行われた内容をできるだけそのまま記載したい。

 

“Q1. 地域メディアとしてのKPIは?”

前述したように、地域メディアと一言でいってもそれぞれのテーマやターゲットは異なる。それぞれの目指すKPIはずばり何なのか。

 

倉重氏:もちろん最終的に売上を目的としているが、その中で、やはり「いかに多くの人に届けられたか」が明らかになる数字なのでPV数、SNSのリーチ数は大切にしていますね。

徳谷氏:僕らはPV数を上げることも当然努力しているが、それよりもいかにファンの顔がちゃんと見えるかどうかを大事にしています。北海道のとあるバーで飲んでたら、「ジモコロの柿次郎さんですよね?」と声をかけられたことがあり、こんなところまで届いているんだ、と実感したんです。そういった実体験に基づいた感動を大切にしてますね。

原田氏:記事広告を一記事ごとに対し売っている為、いかに記事を多く書くかが売上に直結するので、KPIは本数ですね。また編集サイドはUU、SNSのファン数を大事にしています。

 

 

“Q2. 実際のマネタイズ事情!?”

ちょっと突っ込んだ質問。ぶっちゃけ、収益の方はどうなっているの!?

 

倉重氏:各地域のパートナーと一緒に収益アップを目指しています。

メディアごとにECを導入したり、広告、ブランディング化をしたりしながらビジネスモデルの多様化で収益を図っています。

徳谷氏:「ジモコロ」はオウンドメディアなので広告はなく、製作費がメイン収益です。

原田氏:収益減はずばり広告収益です。黒字化してます!(笑)

 

“Q3. 運営側が感じている課題”

倉重氏:直近の課題でいうと、ライター不足ですかね。今とても需要があって、特に地域の人となると引っ張りだこという感じなんです。特に我々は写真も撮れるフォトライターを必要としているのですが、写真も撮れる人となるとなおさら人気が高いので確保するのに苦労していますね。

徳谷氏:僕が思うのはやっぱり編集者が足りないですね。しっかりと書けて、構成を編める人が少ない。こればっかりは、実際にそういう人材を育てる企業が、お金をかけて教育をしていかないと改善しない気がしています。

原田氏:継続性ですね。事業性、収益性、全てにおいて継続できるかどうか。それが編集・ライターにとってもモチベーションになりますから。

西田氏:課題というか、注意点として敢えて言うなら、大手メディアの真似事はしない方が良いということ。メディアに限らず地方がよくやってしまうのは、「ミニ東京化」。体力もマンパワーも違うので、同一化はそもそも無理。東京化を意識しすぎないことが大事だと思います。

 

ユーモアを交えながら分かり易く語る徳谷氏

“Q4. 地域PRのコツ”

参加者が一番聞きたいであろうPRのコツ。発信したい気持ちはあるのに、いざアピールしようとするとどのようにしたら良いか分からない。プロの答えが気になる。

 

倉重氏:いかに特化できるか!ですね。以前淡路島の道の駅と一緒にブランディング企画をした際、玉ねぎを使って爆発的にバズらせることができたんです。玉ねぎをUFOキャッチャーの景品としていれたり、玉ねぎの皮をむいた時の涙の美しさを競うコンテストを開催したりしたんですよ(笑)これがテレビや新聞で取り上げられ、「淡路島=玉ねぎ」というイメージができ、集客の起爆剤にすることができた。

実は淡路島は玉ねぎの名産地ではありますが生産量としては3位。しかし、話題性のあるPRとブランディングの仕方で成功したわけです。いかに「この地域は〇〇がすごい!」といえるものを仕掛けるかどうか。地域活性のコツはそこにあると思いますね。

徳谷氏:地域に呼びこむ力、ですかね。呼んでもてなして好きになってもらう。そしてそこで見つけた資源を編集者の力でクリエイティブに発信すること。

原田氏:ずばり、「切り口を変える」こと。他とは違う切り口、視点で発信することです。

西田氏:ストーリー化ですね。 例えば某航空会社さんが行ったように、ハート形の岩をみつけたら、恋愛系の秘話をくっつけて発信する。ものやスポットをストーリー化することが、一気に集客のきっかけとなることがあるんです。

大手ならではの視点で答える西田氏


 

イベント最後に行われたワークショップでは、ワールドカフェ形式で参加者が登壇者全員と各10分程直接話せる。それぞれの登壇者に対しするどい質問が飛び交い、多いに盛り上がった。

鋭い質問が飛び交ったワークショップの様子

 

今回参加者の中で最も多かったのは地域活性化におけるメディア運営者。

ただ情報を発信するだけではなく、結果に繋げる為のコンテンツ制作の実践的なコツや課題解決へのヒントを直接プロから熱心に学ぶ姿が非常に印象的だった。

参加者の熱意のある意見交換はワークショップ終了後も続いた。

東京一極集中、人口減少と様々な問題に負けず、地方活性化の溢れる可能性が垣間見れた、非常に学びの大きい約2時間半となった。

 

地方のポテンシャルを熱く語る澤野啓次郎代表

 

主催者であるリベルタ代表の澤野啓次郎氏は、自身もシンコーミュージック、ウォーカープラス(KADOKAWA)やヤフーで計18年間のメディア経験を積んだ情報発信のプロである。山口県の小さな町の出身で、日本人にとっては「ふつうの景色」も必ず世界の誰かの「素晴らしい景色」になると、インバウンド向けに山口県を始め日本の田舎を自社造成のウォーキングツアーを通じてブランディングしようと、地域活性事業に従事している。今後もコミュニケーションを重視したイベントを通じて、IT業界、メディア業界、広告業界をリードする存在を目指していくという。

 

取材/文・ローズヴィア麻友子

広告は“嫌われる”存在なのか? 生活者との理想的な関係の築き方

 

デジタルによって、企業と生活者との間のコミュニケーションは大きく変化した。スピードも速く、より濃密に、目線を合わせてともにブランドの未来を築くことさえ可能になっている。クライアント企業同士の協業、メディアとの組み方も、自由自在だ。

 

だが、そうしたデジタルの力を味方につけるには、当然ながら優れた手腕が必要になる。ポイントのひとつになるのが、「多様化するメディアをどう使いこなすか?」という点だろう。メディアの向こう側にいる生活者に、ただ言いたいことを訴えるだけでは、嫌われるのは必至。SNSをはじめ分散化するメディアの姿と、生活者の受け止め方を正しく捉え、その場に応じたコミュニケーションを展開することが求められる。

 

企業のコンテンツマーケティングを支援するリベルタによるセミナー「ViTALIZE」、8月29日にインフォバーンにて開催されたメディアシリーズ第2回目のテーマは「今、嫌われないメディアコミュニケーションとは?」。グライダーアソシエイツの荒川徹氏、ネスレ日本の津田匡保氏、インフォバーンの長田真氏、コムエクスポジアム・ジャパンの中澤圭介氏というデジタル時代の企業コミュニケーションに精通する4者が、企業とメディア、そして生活者の理想的な関係の築き方について語り合った。

 

メディアをどう活用すべきかというテーマについて知見を求めて、約30名が参加した。

 

デジタルの第二ステージへ

キュレーションメディア、広告主企業、メディア、プラットフォーマーという顔ぶれの4者が一堂に会するのはめずらしい機会だろう。

キュレーションメディア「antenna*」を運営するグライダーアソシエイツの荒川氏は、300社ほどのメディアパートナーから記事提供を受けてキュレーションし配信する傍ら、企業のブランディングを支援している。antenna*自体を「ブランディングプラットフォーム」と位置づけ、企業が外部メディアに出稿したタイアップコンテンツを集約して再配信したり、地方自治体向けにテレビ局や出版社と航空会社を交えたブランディング企画を提供したりと、その組み方は極めて柔軟だ。

ネスレ日本の津田氏は、同社のEC事業を統括。ネスレ自体はグローバル企業として、事業を通して各国の問題を解決することをミッションに掲げ、日本でも例えば「ネスカフェアンバサダー」のような、製品販売に留まらないサービスの開発にも注力している。今回のセミナーに際し、「企業の立場として、お客様とより濃密なお付き合いをしていくきっかけづくりにメディアを活用している」と語る。

インフォバーンの長田氏は、同社が運営するデジタルマーケティング戦略情報サイトDIGIDAY[日本版]の編集長を務める。既存マスメディアやデジタルメディアを含めた「パブリッシャー」、YouTubeやantenna*や各種DSPなどのアドテクノロジーの「プラットフォーマー」、広告主企業である「ブランド」、広告代理店として「エージェンシー」の4プレーヤーがデジタルマーケティングを推進するエンジンだと捉え、各者に向けた情報を発信している。

コムエクスポジアム・ジャパンの中澤氏は、マーケティングカンファレンスやイベントを手がける、フランスに本社を置くコムエクスポジアムの日本法人に所属。マーケター向けの一大カンファレンス「アドテック東京」を筆頭に、ブランド企業とエージェンシーやベンダーをつなぐ合宿形式の「ブランドサミット」や「コマースサミット」を主催している。業界の各プレーヤーの意見を取り入れながら企画するセミナーには、そのときどきのマーケティングのトレンドが浮かび上がる

それぞれの立場でマーケティング領域の最新のトピックを注視している4者だが、まず現状の動きをどう捉えているのだろうか? メディアサイドの長田氏は、米DIGIDAY編集長であるブライアン・モリッシー氏の話として、アナログからデジタルへの移行が完了し、今はさらに次なる地点へと進んでいる段階だと説明する。

 

インフォバーン DIGIDAY[日本版]編集長 長田 真氏

 

広告は嫌われるとは限らない

モリッシー氏はこれらの段階を「A地点からB地点へ、さらに今はC地点へ進み始めている」と表現し、DIGIDAYは一連の移行中の葛藤や事件をジャーナリズムの見地から取り上げるメディアだとしている。「デジタル時代の第二ステージとなる“C地点”を具体的にいうと、2015年にスマートフォンの個人普及率が50%を超え、世帯普及率だと70%を超えた。また同年にスマホの広告費がPCの広告費を超え、翌年にデジタル広告費全体が初めて1兆円を突破した、このあたりが『デジタルが普及した次の段階』だと捉えている」と長田氏。

一方、デジタルが一般化するに伴い、これまでになかったさまざまな問題も出始めた。ステルスマーケティングや広告の不正レポート、いわゆる“コピペ”メディアなどは広告主や良質なメディアの頭を悩ませ、透明性が不可欠である流れを決定的にした。同時にユーザーへのアドブロックの広がりは広告があからさまに“嫌われもの”となっていることを示してしまった。

だが、決してすべての広告を排除したいわけではないようだ。2016年にInstagramが発表した、同年でもっとも多くの「Like」を集めた投稿は、アメリカの人気歌手セレナ・ゴメスが投稿した、本人がただコカ・コーラを飲みながらカメラをじっと見つめるポートレート。「インスタはごく一般の人が自分の生活を記録して楽しんでいるメディアなのに、見るからに広告である写真が一位になった。しかも、当初は広告表記がなかったために『ステマだ』と炎上し、そのあと追記したが結果的にもっと伸びて、現状670万のLikeがついているのが、最適な広告のあり方が確定しない“今”を表しているようで興味深い」(長田氏)。

中澤氏は日々企業のマーケターと接する中で、「今改めて、広告の質を見直す必要があるだろうという話が挙がっている」と語る。デジタルマーケティングは、ユーザーのさまざまな反応をつぶさに数値化にできることが大きな利点だ。テクノロジーの進歩に伴って、この人に届けたい、という精度の高いターゲティングが可能になっているわけだが、そこでコミュニケーションを間違うと「本来好かれたい人に嫌われる」という事態が起こってしまう。

 

コムエクスポジアム・ジャパン iMedia Chairman 中澤圭介氏

 

情報との出会いを生み出す

ターゲットが企業のコミュニケーションをどう受け止めるか。そこにはメッセージとクリエイティブはもちろん、どういうメディアで、どんなタイミングで発信するのかもかかわってくる。そうした意味で、広告の質そのものを問う時期にさしかかっているのだという。

荒川氏も、企業とともにブランデッドコンテンツを開発する立場から、「広告は嫌われるもの、デジタル上で“うざいもの”だという前提をantenna*で覆したい」と語る。タイアップ企画の場合も、提携メディアから提供を受けて配信する一般コンテンツと同じように、「信頼性のある良質な情報とユーザーとの出会いの場を創出する」という観点に基づいて取り組んでいるという。

一方、今注目している動きとして、荒川氏はAmazon Echoを例に、音声認識や音声によるコミュニケーションの市場の広がりを挙げる。「antenna*では現在3つのラジオ番組をスポンサードしているが、例えばそれぞれのMCのテイストで、番組にそぐうBGMをつけてantenna*で扱っている経済記事を読み上げると、同じコンテンツでも違う情報の届け方になると思う。それはタイアップにも十分活かせるだろうと模索している」(荒川氏)。

 

グライダーアソシエイツ 取締役副社長 荒川 徹氏

 

パーソナライズの程度は?

生活者に相対して事業を展開している津田氏は、現在の生活者の受け止め方をどう捉えているのだろうか? 特に一般消費材を扱う性質上、「昔ながらの“ザ・広告”という訴求の仕方も継続しているし、実際それが響く人もいる」としながら、「やはり世代の入れ替わりもある。今の流れだと、自分が好感を持ち、さらに友達にも見せたり勧めたりしたくなるようなコミュニケーションにもう少し軸足が移ってもいいのではと思う。表現やメッセージングのバランスをまさに模索している最中」と語る。

世代や属性、志向性などから、どのような発信が好まれるかは人によって大きく分かれるところだ。適切な人へ届けることも“嫌われない”コミュニケーションには重要な観点だ。先に挙がった精緻なターゲティングというトピックに関連して、津田氏は「そのときどきのコミュニケーションの目的に応じて、パーソナライズすることが必要だと思う」と語る。

パーソナライズは前出の透明性の観点同様、企業に今後求められるコミュニケーションのあり方だろう、と長田氏。一方で、パーソナライズが進みすぎると、「メディアとしてユーザーへの出会いを提供する、セレンディピティの創出が難しくなるのは問題だという見方も持っている。例えばメディア同士やブランド同士が連携してデータを共有すれば、今よりもっとずっと精緻なパーソナライズも可能だろうが、メディアとしてそれを導入すべきかというのは躊躇する部分」と語る。

 

ネスレ日本 Eコマース本部 部長 津田匡保氏

 

理想的な広告とは?

本来、広告は「まだ知らない人に知ってもらう、興味を持ってもらう」ことに機能するものだ。それを考えると、過度なパーソナライズはコンバージョンの確度は高くても、広い意味での“出会いの創出”は叶わないのかもしれない。だが、広く遍く伝えるマス的な広告手法では、アドブロックの問題が示すように、ユーザー側にノイズとして受け止められてしまう。そのバランスは今後もしばらく広告主とメディアが向き合う課題になりそうだ。

中澤氏は、全体の流れとして広告のノイズ化は感じるという一方で、「最近だと日清食品『どん兵衛』のマンションポエム広告のように、明らかに広告だがユーザーがコンテンツとして楽しめるクリエイティブも登場している。広告主からよく聞くのは、読者や視聴者に向き合っているメディアの方々ともっと直接話をしたいと。これまで通り、エージェンシーを介するほうがスムーズな場合はそうしつつ、コンテンツ開発などの際はアイデアの模索段階からメディアとタッグを組むことが、ひとつの正攻法になるのでは」と語る。

既存の座組みに捕らわれずにコンテンツやビジネス開発に取り組む荒川氏も、「広告主、メディア、エージェンシーとの間で、もっとユーザーに喜ばれる策はないかと日々話し合っている」という。企業が言いたいことを詰め込むのではなく、伝えたいことをユーザーが楽しめるような形でストーリーを見出して届けること。そのために、関係各社が従来の方法にこだわらず膝を突き合わせることが、“嫌われない”コミュニケーションの第一歩といえるだろう。

 

パネルディスカッション後には、参加者が各登壇者に直接相談ができる時間も設けられた

 

 

取材・澤野啓次郎(リベルタ)/文・高島知子

 

 

どうしたら相手の一歩を促せる? 人を動かすメディアの使い方

今や、企業か個人かを問わず、ネットを介して伝えたいことを自由に発信できる時代だ。しかし、それが本当に相手に受け入れられるかどうかは、別問題。どうすれば、相手のアクションを促せるくらい、メッセージを深く届けられるのだろうか?

 

 

 

企業のコンテンツマーケティングを支援するリベルタによるセミナー「ViTALIZE」、メディアシリーズの第1回のテーマに据えられたのは「今、人を動かすメディアの使い方」。メディアジーンの尾田和実氏、スマートニュースの望月優大氏、inquireのモリジュンヤ氏を迎え、8月24日にインフォバーンにて開催された本セミナーでは、それぞれがメディアを運営する中でどういった観点を持ち、何を重視しているのか、目指すところなどが存分に語られた。

 

「続ける、広げる、巻き込む」「新たな一歩を踏み出すきっかけをつくる」「健全な運営はメディアの生命線」……たくさんのキーワードが飛び出したディスカッションの模様をレポートする。

 

登壇者との対話の時間も設けられた本セミナーには、約50名が参加した

 

 

“編集長”に向けてつくる

それぞれ第一線で活躍しながら、バックグラウンドが異なる三名の編集者が顔を揃えた。

メディアジーンの尾田氏は、音楽系出版社などを経て2009年に同社に参画。2015年より一旦サイバーエージェントにてメディア運営に携わった後、今年改めてメディアジーンに復職、現在は「ギズモード・ジャパン」「ルーミー」「FUZE」の3メディアの事業統括プロデューサーを務める。スマートニュースの望月氏は、経済産業省やGoogleなどを経て、現在は非営利団体の情報発信を支援する「SmartNews ATLAS Program」に携わりながら、個人ブログを中心に執筆も行っている。自身が立ち上げた編集デザインファーム、inquireのモリ氏は、「greenz.jp」での編集を経て「THE BRIDGE」「マチノコト」などに立ち上げから参画。現在は自社メディア「UNLEASH」の運営などを手がける傍ら、NPO法人soar(ソア)の副代表として「soar」の運営にも携わる。

ディスカッションの最初のテーマは、現在携わるメディアの編集方針について。尾田氏は、紙からWebへ軸足を移した経験から、「紙とWebとでいちばん違うなと感じるのは、有料で読者が購入する雑誌は、お金をかけてつくり込めるが、Webメディアはごまかしが効かないこと」と語る。読者が満足する記事を出し続けるには、おのずと自分に近い属性の人に向けてつくるのが正攻法になる。「その意味で、『ギズモード・ジャパン』をはじめ3媒体とも、読者の属性を聞かれたら『うちの編集長がそのまま読者の属性です』と答えていますね。扱うテーマに誰よりも精通する編集長に向けてつくるのが、ひとつの編集方針になっています」。

 

メディアジーン 事業統括プロデューサーの尾田和実氏

 

テーマの濃度を調整する

スマートニュースの望月氏は、「スマートニュース自体は一次取材をするメディアではなく、あくまで各メディアから記事配信を受けているプラットフォーム」だと説明する。記事の出し分けはすべてアルゴリズムで決まるため、人的な編集方針はない。

一方、同社にて望月氏が担っている「SmartNews ATLAS Program」は、非営利団体が社会に向けて情報やメッセージを伝えていく上で、いくつか注意している点があるそうだ。2015年夏に同社の社会貢献活動の一環としてスタートしたこのプログラムでは、審査を通った非営利団体に、1000万円分のスマートニュース内の広告枠を提供している。現在は第二期として、NPO法人PIECESによる子どもの孤立を防ぐ“コミュニティユースワーカー”の育成事業と、認定NPO法人フローレンスの赤ちゃん縁組事業を支援しており、スマートニュースのネイティブ広告枠に配信するコンテンツ制作のサポートなどを手がけている。

その中で望月氏は「NPOから情報発信をするとき、それが特定の問題を広く知ってほしいとか、制度を変えたいとか、テーマが大きいほど“ストレッチ”する必要があると思う」と話す。社会的課題に熱心に取り組むほど、複雑な現実や細かい制度に目がいってしまうが、そうした部分を掘り下げすぎると、一般の人には伝わりづらくなる。そこを緩和し、感情的な部分と客観的なスタンスの間をとって制作しましょう、と話すことが多いそうだ。

よりたくさんの人に情報を届けるときの考え方として、望月氏は「続ける、広がる、巻き込む」というキーワードを提示する。「まず情報発信を点で終わらせず、継続して線にしていく。露出する場所も、自社メディアやSNSだけでなく、今日のようなイベントや、どうやったら紙メディアから取材がくるかなども考えて複数化していく。そして、世の中とつながるポイントになるような発信力のある仲間を内側に入れていく。そんなことを考えて活動しています」。

 

スマートニュース マネージャ グロース/パブリック担当 望月優大氏

 

 

知ることから始まる

モリ氏は、複数の活動の中から「soar」を紹介。このメディアは「人の持つ可能性が広がる瞬間を伝える」というコンセプトを掲げ、障害や難病、LGBT、貧困といった社会的マイノリティの方々へ、丁寧なインタビューを重ねている。扱うテーマは幅広く、なじみのないものも多いが、だからといって分かりやすくするために型にはめた書き方をすると、誤解も生じやすい。「当事者の方々はまさに、そういうラベルを貼られたくないと思われていることが多いので、文字量を制限せず、ライターの感じたことを交えながら必要な情報やエピソードをしっかり入れて発信するようにしています」。

実際、記事への感想では「友達の話を聞くように記事を読めた/実際のところを知ることができた」という声もあるそうだ。ダイバーシティの実現や、インクルーシブな社会を目指したとき、「社会的マイノリティの友達がいるかどうか、その人たちのことを知っているかどうかは大きなハードルになると思う」とモリ氏。また、メディアに広告を入れず、主旨に賛同する寄付会員の支援で成り立たせているのも、大きな方針のひとつになっている。

スタートアップ、テクノロジー、地方、社会的マイノリティと、モリ氏がカバーするテーマは多岐にわたる。「僕にとって人を動かすとはどういうことかを考えてみると、人がチャレンジする助けになる、新たな一歩を踏み出すきっかけをつくることなのかなと思っています」とモリ氏。それぞれ掘り下げたメディアを立ち上げてきたが、それを横断するような動きは少ない。今後は今まで分断されていた部分をつないでいくような活動も考え中だという。

 

inquire代表取締役 UNLEASH編集長 モリジュンヤ氏

 

 

健全な運営に意義がある

メディアを運営する際、必ず同時に挙がるのが、マネタイズや資金の問題だ。編集方針に続いて、「なぜ今その事業に情熱を傾けているのか」という問いに、メディア事業の責任者である尾田氏は「収益化のプレッシャーは常にある」としながら、「僕の場合はメディアの収益化になりますが、きっちり収益を確保して黒字化し、健全にメディアを運営していくことは、実はすごく意義あることです。同意に、Webメディアがこれからも生き長らえていくための生命線です。そこに携わるのが、僕の天命だと思っています」と語る。

モリ氏は、これまで立ち上げてきたメディアを振り返り「情熱を注げるテーマだからメディア化した、という順番ですね」と話す。最近こういう話をよく聞くな、こういう領域の人に会うなという小さな気付きが“フィルター”になり、そのテーマの情報を意識的に摂取していくと、どんどん気になっていく。せっかく人に会ったり情報を集めたりしているのなら、メディア化してアウトプットしようという流れが多いという。

ただ、やはりここでもマネタイズは課題になる。「メディアビジネス自体が、それ単体では成立しにくい時代では」とモリ氏。「特に、新規メディアがすぐに売上を立てるのは難しい。発信することで、自分たちに専門性があると周囲に伝えて、同じテーマで企業の情報発信の支援やセミナーを提供するなど、キャッシュポイントは別でつくるようにしています」。

一方でメディアが多様化する現在、メディアを使うという観点では、資金をかけずに大きなムーブメントを起こすこともできる。例えば望月氏が個人発の企画として2012〜2013年に手がけた、若年層に向けた選挙の投票促進プロジェクト「I WILL VOTE」は、Facebookを中心に使ったので「1円もかかっていない」というが、最終的にFacebook社に好例として紹介されるほどの広がりを見せた。まさに、人を動かしたかった事例だと望月氏。

今携わるATLASは、実は望月氏が発案した活動だという。NPOをはじめとする非営利団体が取り組む社会的課題は、一般メディアの取材が多いわけではなく、取り上げられても知識が乏しい分、意図と違う記事になることもある。望月氏は「熱意を持って取り組まれているからこそ、発信スキルを高める支援をしたい。NPOの人たち自身が情報発信スキルを身につけて、適切なメディアリレーションもできるようになれば、世の中の『社会問題に関する情報の質』が高まると思うんです」と話す。

 

登壇者の話に熱心にメモを取る参加者

 

エンゲージメントは基礎体力

また、マネタイズと並ぶメディア活用の大きなテーマに、効果測定がある。PVやUUは一般的だが、それだけでは測れない効果もある。これについては三者とも、「どれだけ深く届いたか」に注目しているようだ。それは、例えば記事の「読了率」「滞在時間」いった指標で可視化できる。発信する側のソーシャルアカウントのエンゲージメント(クリックや「いいね」などの反応

)も重要だ。「エンゲージメントは基礎体力として、普段からすごく重視しています。自分たちにその力がないと、誰かに頼るしかなくなってしまうので」と望月氏。

記事の最後に「感想を送る」といったボタンなどを設けていると、「実際にアクションにつながったかが分かるし、内容がどんなふうに響いたのかは僕らの参考にもなる」とモリ氏。さらに尾田氏は、記事による態度変容に注目しているという。「その人が最終的にある商品を買ったとして、その決断に僕らの記事が強く影響していた、というようなアトリビューション(間接効果)が今後重視されるようになれば、と思います。商業メディアなので当然PVなども重視していますが、例えばFUZEだと1万字ほどの長い記事で平均滞在時間が6分を超えていたので、深く届いていることにも価値を感じてもらえるといいですね」。

本当に人が動いてくれたのか、それが確かめられてこそ次の改善へとつなげられる。三者三様のメディア運営やコンテンツの考え方は、セミナー参加者にとって大きな刺激となり、パネルディスカッション後に設けられた3グループでの相談と対話の時間では、活発な意見交換が目立った。2時間半におよぶセミナーは、企業、NPO、個人、さまざまなレイヤーでのメディア活用に、学びの大きい機会となった。

 

登壇者と直接話せる時間には、数々の具体的な相談が持ち上がった

 

リベルタのイベントシリーズ「ViTALIZE」は今後もメディアリーダーズ会議のシリーズを行っていくという。コミュニケーションを重視したイベントを通じて、IT業界、メディア業界、広告業界をリードする存在を目指していく。

 

参加者同士、登壇者とのネットワーキングが盛んなのが「ViTALIZE」の特徴

 

 

取材・澤野啓次郎(リベルタ)/文・高島知子